なぜ伝わらない?“気づかせる伝え方”をUSJのCMから学ぶ

「わかりやすく伝えることが一番大事」
そんなふうに思っていた時期がありました。
要点をまとめて、メリット・デメリットを整理して、情報をシンプルに届ける。
それが“伝える”ということだと思っていたんです。
でも、いつからかふと感じるようになったんです。
「あれ?伝わってるはずなのに、心には残ってないかも」って。
言葉って、届けたつもりでも、
ちゃんと届いていなかったのかもしれない。
そんなもやもやに、そっと光を当ててくれたのが、
2016年のあるCMでした。
それは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのクリスマスCM。
父と娘が一緒に過ごす時間。
アトラクションの説明も、イベントの詳細も一切出てこない。
ただ、クリスマスの灯りの中で過ごす、親子の静かな時間が映し出されていました。
流れるナレーションと、ひとつのセリフ。
「一緒に来てくれるのは…これで最後かもしれないな…」
私はその言葉を聞いて、自分の未来を見た気がして。
登場するのは、“誰でもない、私たち”。
このCMのすごさは、「自分ごと」として受け取れること。
USJの父親や娘ではなく、
見た人自身が、自分の親子関係やこれまでの時間を重ねてしまう設計。
特定の人物の物語ではなく、
観る人一人ひとりの“心の奥”をそっと揺らす構成になっています。
だから私は、このCMを見て自然と涙が出てしまったのだと思う。
伝えるのではなく、“気づかせる”。
このCMが語らなかったのは、「何ができるか」や「どんな体験か」だった。
代わりに描かれたのは、
「なぜ、今この時間が大切なのか」という存在の意味。
これはまさに、伝え方の本質──「Why」を伝えるということ。
商品のスペックではなく、感情が動く理由を示す
完成された説明より、受け手が想像できる余白を残す
受け手が“自分ごと”として気づいたとき、心が動く
人は、何かを説明されたときではなく、
“自分の感情に気づいたとき”に、初めて行動を起こす。
USJのCMは、それを静かに証明してくれたような気がしている。
まとめ
「あと何回、一緒に笑えるだろう?」
「あと何回、会いに行けるだろう?」
「あと何回、声をかけられるだろう?」
この問いに、正解はない。
けれど、その問いが心に浮かんだ瞬間から、
私たちは“今ここにある時間”を大切にしようと、少しだけ変わりはじめる。
USJのCMは、「すごい」ではなく「静かに気づかせる」ことで、
人の心を動かすことができると教えてくれた。
そして私は、これからの伝え方の中にも、
この“気づきをデザインする力”を大切にしていきたいと思っています。